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サラリーマン吉宗

はじめに

この作品は小説と言うよりも「こんなバカみたいなやつらが身近に居たら楽しいだろうなー」と思うような一つの非現実の物語として書きました。肩の力を抜いてバカみたいにリラックスして読んで下さい。
なお、読む前にふぞろいの林檎たちのオープニングを思い浮かべてもらって頭の中でいとしのエリーを一番まで歌って下さい。もしノリノリだったら二番まで歌ってもけっこうです。
さらにちょーノリノリだったら声を出して歌ってもけっこうです。
これによってよりこのギャグ小説に入り込み易くなるはずです。


第一話 鼻ちょうちんで飛べますか?

群馬県某市にある事務機器販売会社
「ビー.アオ.トラバイオ(株)」
に今年も前途有望な新入社員たちが入社してきた。
今日はその入社式。その新入社員の中に武蔵川吉宗、通称菊正宗の姿があった。
ちなみにこのあだなは、名前に音が似ているかららしいと吉宗の祖母が亡くなる間際に教えてくれたらしいとかそうでないとか。
「さー、今日から俺も社会人。いっちょやったるかー」なにをやるのか皆目検討もつかないが、火の玉のようなやる気は周りの
新入社員など比較にならないほど熱く熱く燃え上がっているかは定かではなかった。
いや、むしろその風貌から全くやる気は感じられなかったかもしれない。
入社式は慣例どおりスムーズにすすんで行った。そして社長の挨拶が4時間を超えようとしたその時であった
『まさに時代は21世紀を迎えようとしてしています。(もー4回目)あなた方一人一人が我が社にとって・・・・』
この社長の挨拶を吉宗は目を閉じて、一言一言を噛み締めて夢の中へと誘われて行った。そして鼻からエクトプラズムかと
思われるような鼻ちょうちんを
『プー』
っとふくらませたかと思うと、その鼻ちょうちんはぐんぐん膨らみ吉宗を浮かび上がらせるまで成長して行った。まるでヘリコプター
で救助された人間のごとく・・・・
そうだね!アドバルーンみたいに空へと浮かんだのさ。
その時吉宗の昨日ピシっとアイロンをかけたズボンが
『にゅろん』
っとずり落ち、愛用のふんどしが
『ハラリ』
と舞った。そのふんどしには
『売り尽くし、謝恩祭!』
とプリントされてあった。
と、その時ようやくこの事態に気づいた社長が大声でわめき散らした。
何がなんでも売り尽くせー!』
狂ったのか?狂ったんだろうな。こんな新入社員がいりゃーそりゃ狂うよ。
しかしその中でも冷静さを失わずに対処しようとしている男がいたんだね。その男は吉宗と同じ新入社員の−ボブ・チャーリー−通称
ブラウンだった。
なぜブラウンかと言うと、外国人はボブって言うとブラウン、ブラウンって言うと茶色を意味するかららしい。もちろん、ダークブラウンや
ライトブラウンもあるが、ここでは単純に『ブラウン』でいいようだ。
ごく希に
『ブロウン』や
『ブローウン』などと呼ばれる事もあるらしいがそれもありらしいと先代の二子山親方などは言っている。当然二代目は
『ダメ!』
とどうにも首を縦に振らないようだ。
さて、話しを元に戻してそのブラウン(くどいがブローウンでもよい)が吉宗の大きな鼻ちょうちんめがけて自分のハンケチから鳩を出す
と、周りの連中はもー拍手喝采!
『ブラーボ!』『ベサメムーチョ!』『スニッカーズ!』『小渕首相!(ちょっと危険)』などなど、やんややんやの大声援。
その鳩にブラウンはそっと耳打ちをしたのさ
『キクマサムネ(もー忘れてる人もいるだろうが吉宗のあだな)ノハナチョウチンヲツツイテクルアルヨ(ここだけインチキ中国人になるあ
たり、ブラウンの男っぷりを感じずにいられないのはなぜだろう?)』
当然鳩は、ブラウンの命令には逆らえない。なぜならブラウンに逆らえば餌をもらえないからだ。そりゃそうだよね。

鳩は吉宗の鼻ちょうちん 目掛けて一直線に飛んで行った。鳩の気分は『ヒッチコックの鳥』
だったらしいが見ている方は、ただの鳩に見えていた。
そのヒッチコックの鳥だか鳩は見事に吉宗の鼻ちょうちんのちょうどこめかみのあたりにくちばしをヒットさせ、そのまま浅草へと
旅立って行った。

『サンキュー、サー・・』
と、なぜか軍人風に鳩に礼を言ったブラウンだったが全く軍人の経験はないばかりか、実は15歳の少年であった(私自信も今はじめて知
らされたので大きなショックを隠し切れないでいるところだ)。

鼻ちょうちんをぺしゃんこにされた菊正宗こと吉宗はようやく眠りから覚めたのだが、相当な高さから(約13m程の高さか)地面目掛けて
真っ逆さまに落ちて行った。

『なむさん!」
菊正宗は今時おやじでも言わないようなせりふを叫んだ。
と、その時である。
ついさっきまで、「売り尽くせー」などと狂った言葉を叫んでいた宗像社長が上半身をまっぱにして(下は紫紺のまわし)ものすごい勢いで壇上
から降りて来ると、一目散に菊正宗の救出へと急いだ。
あまりに慌てていたためブラウンに激突してしまった宗像社長。
『ドカーン』
凄まじい衝撃音が辺りに響き渡った。
しかし宗像社長はなんとか菊正宗を救出しようと両腕を広げてがっちりとその肉体をホールドした。助かったー!
宗像社長はほっとしている菊正宗に言葉をかけた
『武蔵川君と言ったね、君今日で、って言うか
今クビね。いわゆるビークーよ。』
『なんだと?クビだと?何それ?』
菊正宗はちょっと頭が悪いので、助けてもらって首ってなんの意味だかほんとにわからなかった。
首っていやー人間の首しか思い浮かばないので無理はなかったのかな。
するとさっきまでは完全にギャラリーと化していた他の新入社員たちが社長に哀願するではないか。
『社長ちょっと待って下さい』
と社長に講堂の二階に上がるように必死に頼んだ。
社長もなんのことやらわからないがとにかく新入社員たちの言うとおりに二階へ上がってみた。
するとどうだろう、二階から見えた風景は
『ゆるしてください』
との人文字が見事に完成されていた。
続けざまに
『打て!』『ガッツ!』『PL』『核兵器反対!』
などなどすばらしい人文字を社長に見せつけた。
『武蔵川君、私の負けだ。しかし勘違いしてはこまるぞ。君に負けたんではなく君の仲間のあの新入社員のみんなに負けたよ。クビは取り消しだ。』
菊正宗はその社長の言葉を聞いて号泣した。なぜかって?それは社長が首と言う言葉を連呼しているが、その言葉の意味を全く理解できない
自分に腹を立てていたのだ。

しかし宗像社長はそんな菊正宗をおかまいなしに抱きしめた。
熱い抱擁が3分ほど続いただろうか。
突然その沈黙を菊正宗が打ち破った。宗像社長の前まわしをがっちりとつかんだ菊正宗はぐっとそのまえみつを引き付けて、豪快に宗像社長
をつり出した。

さすがの宗像社長もなすすべなく土俵をわってしまった。
『いやー、あはっはっはー。負けだ負けだ。今度は武蔵川君、君に完敗だよ。でもつり出しで負けたなんて何年ぶりかなー。次はこんなに簡単に
勝てるとは思うなよ。』
こんなバな社長はめったにいないが、国体11連覇中の宗像社長を相手にあっぱれなつり出しで勝った菊正宗は、自分でも信じられないといった
表情であった。

『自分はまだまだひよっこ。これからもビシビシ鍛えて下さい。これからも力士としてまた社員として一生懸命取り組んでいく所存であります。』
菊正宗の男らしいヒーローインタビューが会場に響き渡った。
もー会場は割れんばかりの大歓声。
『きっくまっさむね!きっくまっさむね!』
菊正宗コールがいつまでも、いつまでも鳴り止まない中一人の男がうずくまっていた。
そう、先ほど宗像社長にクラッシュされたブラウンだった。
ブラウンは頭部をしこたま打ったため、ほぼ即死状態だったのだ。
死因は地面に頭を打ったものによる頭蓋骨陥没骨折、及び脳挫傷、並びにアトピー性皮膚炎の掻き壊しによる出血多量が検死の結果であった。
本名−ボブチャーリー三世ジュニアシニア−享年15歳。
君の思い出が走馬灯のように蘇るよ。
ほんとはインド人なのにアメリカ人って言いはってたね、ブラウン。
くわがたの幼虫だと思って育てていたのに成虫になったらかなぶんになっちゃって泣きじゃくっていたブラウン(でもなんとなく途中で気が付いていたらしい)。
茶色いブラウン。
そんなブラウンを僕らはけっして忘れない。さよなら、ブラウン・・・
『ブラウーン!!!!』
菊正宗の叫び声がいつまでも、いつまでも会場にこだましていた。


第一話 鼻ちょうちんで飛べますか?

(完)

次号「遅刻した事ありますか?」をお楽しみに!

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